火星探査の歴史
太陽系の惑星で人類が今最も興味をもっている惑星といっても過言ではない火星。ソビエト連邦・ロシアとアメリカ合衆国はそれぞれ過去に20回以上もの火星探査計画を行っている。日本も過去に1度挑戦はしているが成功に至っていない。その他では欧州宇宙機関とインドが探査を行っている。
ソビエト連邦の火星探査の歴史
火星探査の計画を世界で初めて実行したのはやはりソビエト連邦。1960年10月に最初の火星探査機「マルス1960A」を打ち上げているがエンジントラブルにより地球周回軌道に達することができなかった。その後も1970年までの10年間で7回打ち上げを試みるも成功には至っていない。
1971年に打ち上げられた「マルス2号」がついにソビエト連邦初の火星周回軌道への到達をする。マルス2号は火星表面形状、大気、磁場の観測を行った。マルス2号には着陸船も搭載されていて火星への投入をされているが降下システムのトラブルによりパラシュートが展開できず火星表面に衝突したものと推測される。成功はしなかったものの世界で初めて火星表面へ送り込まれた人工物となった。
その後も1980年代後半までオービター、フライバイと何度か成功はしたもののランダーの着陸には成功できていない。1996年にロシア連邦として「マルス96」の打ち上げを最後としてその後の計画は実行されていない。
アメリカ合衆国の火星探査の歴史
ソビエト連邦が火星探査計画を先行していくもなかなか成功できないなか、1964年アメリカ合衆国は最初の火星探査機「マリナー3号」を打ち上げるが火星の周回軌道へ達することができずに終わる。しかし翌年1965年には「マリナー4号」を打ち上げアメリカ初の火星のフライバイに成功している。
その後も1969年にはマリナー6号、7号もフライバイに成功。1971年にはマリナー9号が初の火星周回軌道に入る。マリナー9号が火星周回軌道に到達して火星表面の撮影を行うと砂塵嵐により火星表面地形は不明瞭であったため349日間周回軌道上を飛行して嵐が落ち着いてから撮影をした。
マリナー9号は7000枚以上の火星表面撮影を行い表面の約80%を記録した。その結果クレーターや太陽系最大の火山といわれるオリンポス山、長さ4000kmにもわたる峡谷のほか水の痕跡と考えらえれる浸食跡、川の形跡など貴重な発見がされた。また火星の衛星フォボスとダイモスも撮影された。大きな成果を得たマリナー9号は高度制御ガスがなくなり1972年10月に運用を終えている。
その後は1976年に火星探査機バイキング1号、2号が周回軌道到達に成功して初めてのランダーの着陸に成功している。ランダーは火星表面からの映像を記録するなどして通信が途絶える1982年11月まで運用された。
1997年には探査機「マーズ・パスファインダー」が火星への着陸に成功して、初めてのローバーが送り込まれる。ローバーは10kgほどの小型機種でX線分光計が搭載されており岩の組成の観測などをおこなった。
2000年代に入るとアメリカ合衆国の火星探査はより活発になる。まず2001年に探査機「2001マーズ・オデッセイ」が火星周回軌道に入る。この名称「2001マーズ・オデッセイ」はあの名作の邦題「2001年宇宙の旅」の原題「2001: A Space Odyssey」に由来している。いかにあの映画の影響が大きかったがわかる。
マーズ・オデッセイの主な目的は水の存在を確認することである。その結果、火星の南極や北極を覆う二酸化炭素の氷の下に大量の水が存在する可能性を示すデータや南極の表面下1mほどのところに大量の氷が存在する可能性を示すデータを得る。
マーズ・オデッセイは現在も稼働していて他の探査機の中継を行っている。
2001マーズ・オデッセイが映画からの影響を受けた命名であるが、実際にドキュメント映画になったものと言えば2003年に打ち上げられた通称「スピリット」と「オポチュニティ」の2つの探査機がある。
それぞれ正式名称は「マーズ・エクスプロレーション・ローバーA」と「マーズ・エクスプロレーション・ローバーB」である。2つの探査機は無事火星に着陸するとローバーとして長期間の探索を続ける。
翼のように太陽光パネルを広げ長く首を延ばして顔についた目のようなカメラで火星表面を撮影しながら複数の車輪で動き回る姿はまるでダチョウのようである。マーズ・オデッセイが水や氷が存在する可能性を確認したので、スピリットとオポチュニティは水の痕跡を探し出すことが目的であった。
スピリットは車輪の故障により2011年には運用を終了したが、オポチュニティは水の痕跡が残る岩石や鉱物を発見している。その後も火星の砂嵐や過酷な気温変化に耐えながらなんと2019年まで約15年間も火星表面を動き回り探索を続けた。我々が地球で生活を送るなかオポチュニティは一人火星を探索し続けていたことは知らない人も多いのでないだろうか。スピリットとオポチュニティの活躍は映画でも確認できる。
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その後も2006年オービター、2008年ランダー、2009年フライバイ、2011年ローバー、と次々に火星探査に成功している。2006年のマーズ・リコネッサンス・オービターと2011年の宇宙船マーズ・サイエンス・ラボラトリーが投入したローバーのキュリオシティは現在も運用中である。
日本の火星探査
日本は唯一2003年に初の火星探査機「のぞみ」を打ち上げている。火星軌道投入前に通信が途絶えて周回軌道に入ることを断念しフライバイをして火星に約1000kmまでは接近したと考えられる。その後は火星と同じ太陽周回軌道上を浮遊し続けるものと思われる。
欧州宇宙機関の火星探査
2003年にマーズ・エクスプレスが初の火星周回軌道到達に成功。火星表面の撮影やマッピングをしながら現在も運用中。その後は2007年にロゼッタがフライバイに成功している。
インドの火星探査
インドはマーズ・オービター・ミッションという火星探査計画として通称マンガルヤーンというオービターを2013年に初めて打ち上げている。火星周回軌道に入ると火星表面や大気の観測を行った。その後は2022年に通信が途絶えて運用終了となっている。政府による承認から打ち上げまでわずか1年5か月という短期間での成功となった。