水星探査
太陽系の惑星で太陽に最も近い位置で周回しているのが水星であり、水星の自転速度も遅く地球が約24時間で1周するのに対して水星は約1400時間もかけて1周する。そのため太陽からの影響もとても大きく表面温度は427℃から-173℃まで変化をする。熱影響以外にも太陽からの強い重力の影響もあり水星を目指す探査機の制御はとても難しい。そのため水星の探査計画は少なく打ち上げられた探査機はアメリカの「マリナー10号」と「メッセンジャー」、欧州宇宙機関と日本の共同計画の「ベピ・コロンボ」の3つだけである。
マリナー10号
1973年にアメリカのNASAが打ち上げた宇宙探査機で惑星探査計画であるマリナー計画の最後の探査機となった。人類が初めて水星を調査した探査機でもあるが水星探査の前に金星を調査しているので、複数の惑星を1機で探査した最初の探査機でもある。
1973年11月3日にアメリカ合衆国のフロリダ州ケープ・カナベラルから打ち上げられたマリナー10号は4か月かけてまず金星に向かった。1974年2月には金星に5768kmまで近づくと金星の大気の状態を撮影してからスイングバイにて水星へ向かった。ちなみにスイングバイを行った初めての探査機でもある。
水星へ向かったマリナー10号は結果的に計3回水星付近を通過している。最初は金星付近を通過した翌月の3月で703kmのところまで近づいて水星をスイングバイにより通過して太陽の重力を利用しながらまたぐるりと回って、またまた金星に近づき、金星の重力を利用して再び金星をスイングバイして同年9月には水星に48,070kmまで近づく。そして同じ方法でまたぐるりと回って翌年の1975年3月には327kmまで水星に近づいた。その際に水星の地表面の4割を撮影している。その後は姿勢制御用の燃料を使い果たすと太陽の周りを公転する周回軌道に入り現在も飛行し続けていわゆる人工惑星の状態になっている。
マリナー10号の大きさは幅約1.4m、高さ約0.5mで両サイドに2.7mほどの太陽電池パネルを備えていて、重量は約500kgである。
マリナー10号の観測により水星の大きな特徴が2つみつかった。1つは水星のは地球の半分以下の大きさにもかかわらず地球と似たような地場を発生しているということ。2つめは地場は地殻の融解により発生すると考えられていたが、水星の表面に多数のクレーターがあり地殻運動の経歴がないことがわかった。
水星は太陽に近く調査するのは困難を極めるが謎に包まれた大変興味深い惑星であることは間違いない。
メッセンジャー
2004年8月3日にアメリカの探査機メッセンジャーが打ち上げられた。メッセンジャーという名前は「Mercury surface, space environment, geochemistry, and ranging」の頭文字をとっている。
2004年8月3日にケープカナベラル空軍基地から打ち上げられたメッセンジャーは、2005年2月に地球をスイングバイにて離れると2006年10月には金星をスイングバイして2008年1月に水星に200kmまで近づいた。その後再びスイングバイして同年10月と2009年9月に同じく200kmまで近づくと2011年3月に水星の周回軌道に入った。
2014年4月には水星を3000周もすると高度を徐々に低下させ水星表面の25kmまで近づき2015年5月にはついに水星表面に落下した。落下する直前まで観測は行われている。
メッセンジャーの大きさは1.27 m × 1.42 m × 1.85 mで質量 約1tである。
ベピ・コロンボ
2018年10月19日、フランス領ギアナの宇宙センターから日本のJAXAと欧州宇宙機関の共同開発の水星探査機「ベピ・コロンボ」が打ち上げられた。名称の由来はスイングバイ方式を生み出したイタリアの天文学者「ジュセッペ・コロンボ」からきている。
探査機は日本の開発機である水星磁気圏探査衛星MMO (Mercury Magnetospheric Orbiter)という機種と欧州宇宙機関の水星表面探査衛星MPO(Mercury Planetary Orbiter)という機種が連結した状態で打ち上げられ、水星周回軌道に入ると分れて飛行する予定である。
2020年4月には地球をスイングバイして、10月には1回目の金星スイングバイを行い、2021年8月には2回目の金星スイングバイをして、10月に1回目の水星スイングバイを行っている。
2022年、2023年にも1回づつスイングバイを行って水星に200kmほど近づく。今後は2025年までに計6回のスイングバイを行ったのち、水星の周回軌道に入る計画である。
水星磁気圏探査衛星とは
水星の固有磁場や磁気圏、大気の観測を目的とした衛星のこと。水星は地殻運動の経歴がないにも関わらず、地球のような磁場が発生していて、その磁場の中心軸である磁気赤道が水星の中心軸からずれているというとても不思議な現象が起きている。このような謎を調査するための探査衛星である。
水星表面探査衛星とは
水星の表面の地形や、表面にある鉱物や化学組成の調査、重力場の計測を目的とした衛星である。
水星探査のまとめ
・太陽に近い惑星である水星の探査はとても厳しい環境にさらされるため太陽系のなかでも調査がまだまだ進んでいない
・アメリカの「マリナー10号」「メッセンジャー」と日本と欧州宇宙機関の共同開発の「ベピ・コロンボ」の3機しか探査に向かっていない
・水星は地殻運動の経歴がないにも関わらず地球のような磁場が発生していて、磁場の中心軸が水星の中心軸からずれていて詳しい理由はわかっていない